院長メッセージ

 平成28年度より、徳島大学では教養教育院が設置されました。その名のとおり、教養教育を運営する組織です。大学の歴史は800年にわたりますが、ヨーロッパで誕生したとされる「教養教育」はリベラルアーツと呼ばれ、現在においても教育問題の中でよく登場する言葉です。要するに「思考の術」といった意味合いがあるでしょう。徳島大学の教養教育は、前年度まで全学共通教育と呼ばれ、全学共通教育センターという組織が中心となって運営されてきました。当時から教育改革の柱として、イノベーション教育、グローバル化教育が主なものでした。

 イノベーション教育は何となく「ものづくり」のイメージとして捉えられる場合が多いのですが、たとえ優れた技術を持っていても、それを実現し広めるためには別の知識やスキルが必要となります。とりわけグローバルスタンダードという国際的な基準、感覚などを理解しないと採用されない評価されないといったことが数多くあります。グローバルスタンダードとなれば、グローバル化教育にもつながるわけですが、これもまた、英語教育に直結させて、英語教育がグローバル(化)教育と捉えられがちです。経営者を対象にした調査で、「企業のグローバル化に役立った人材」は、英会話の能力の高さではなく、外国語による「論理的な思考ができる」人材であるといったことが報告されています。英語を一生懸命勉強したけれど、それのみに集中してもグローバル人材としては具合が悪かったということを意味しているのでしょう。

 結局のところ教養教育として授業科目を立てても、学ぶ学生の側からは、いかに多分野の学びを融合化していくかが大切であるということになります。まさに「思考の術」といえるでしょう。徳島大学の教養教育は様々な柱を立てながらも重複するような形で授業を配置しています。理由は、いろいろな学問の思考をヒントにして他分野でも応用できる能力を身につけてもらいたいと考えているからです。人格形成にふさわしい伝統的な教養教育の追求とともに、時代に即した、あるいは時代を先取りした教養教育を追求する、これが教養教育院の最大の目的といえます。

徳島大学教養教育院長  荒 木 秀 夫